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北野恒富鏡の前
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北野恒富の代表作《鏡の前》には、題にある鏡が描かれていない。髪に櫛を挿す芸妓はこちらを見ており、見る者が鏡の位置に立っていると読める。大正4年(1915年)の院展に出した作品である。
その鏡は、構想を練る途中で姿を消した。初めのスケッチでは、二人の女性が一つの鏡をのぞいている。やがて二人は別々の絵に分かれた。大きな下絵には、何層も紙を貼り重ねた修正の跡があり、簪をくわえて右を向いていた顔が、正面近くを見上げる顔へと変わっている。
分かれたもう一人は、赤い着物の芸妓を描いた《暖か》になった。恒富は二枚一組で「赤と黒との印象」を描こうとし、本作で黒を表した。だが人に勧められて、《暖か》は文展、本作は院展と、別々の展覧会に出した。のちに恒富は「両方とも歡迎されなかつた」と振り返っている。
- 作品種別
- 絵画
- 技法
- 絹本着色/額
- 制作年
- 1915
- 作品サイズ
- 185.6 × 112 cm




