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村

村上三郎

むらかみさぶろうSaburo Murakami
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白い紙を張った木枠に、体ごと突っ込んで破る。1956年、村上三郎がこの一瞬の行為を発表したとき、絵画は壁から剥がれて空間の出来事になった。破れた紙の穴と縁、飛び散る繊維の痕跡だけが残る作品《通過》は、具体美術協会の身体性を最も鋭く体現した仕事のひとつとして知られる。

大阪に生まれ、旧制の学校を出たのち独学で絵を志し、戦後まもなく前衛美術の輪の中に加わった。1954年、吉原治良を中心に結成された具体美術協会に参加し、「人のまねをするな、今までにないものをつくれ」という吉原の号令のもと、白髪一雄や田中敦子らと並んで最も過激な実験を行った一人となる。紙を破る、瓶を積み上げて落とす、扉を勢いよく開閉させる——キャンバスも絵具も介さずに、物質と身体の衝突そのものを作品にする発想は、当時の海外の美術家たちを驚かせ、のちのパフォーマンス・アートの先駆けと評されることになった。

紙破りの仕事はその後も繰り返し形を変え、複数の紙を段階的に破っていく連作や、破れ目の形そのものを絵画として提示する試みへと発展する。1960年代以降は具体の集団活動が変質していくなかでも独自の探求を続け、穴や境界、通過という主題を静かな作品群のなかで反芻していった。派手な一回性の行為の裏に、物質と対峙する禁欲的な集中があったことは、晩年の仕事を見るとよくわかる。

1972年の具体解散後も大阪を拠点に制作を続け、1996年に没した。近年になって国内外の回顧展が相次ぎ、絵画の枠組みそのものを体当たりで問い直した仕事として、あらためて評価が高まっている。

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