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ギュスターヴ・モロー

ギュスターヴ・モロー

Gustave Moreau
10 作品

パリの裕福な建築家の家に生まれ、幼くして絵と旅への憧れを植えつけられた。20代でイタリアに渡り、ルネサンスの巨匠たちを模写しながら、同世代の画家テオドール・シャセリオーと出会う。奔放な色彩と異国趣味を併せ持つシャセリオーの絵に、モローは終生消えない刺激を受けた。師と仰いだのはウジェーヌ・ドラクロワの劇的な色彩感覚だが、モローはそこに冷たく硬質な線と、宝石細工のような装飾性を重ねていく。

1864年のサロンに出品したオイディプスとスフィンクスで評価を確立すると、以後は聖書や神話の一場面を借りて、欲望と死がないまぜになった幻想世界を描き続けた。とりわけ執着したのがサロメの主題で、宝飾に覆われた踊り子の前に洗礼者ヨハネの生首が幻のように浮かぶ出現は、のちに作家ユイスマンスが小説『さかしま』で偏執的に描写したことで、世紀末芸術の象徴として語り継がれることになった。金や象牙を思わせる濃密なマチエール、細部まで描き込まれた文様は、印象派が光と大気を追い求めた同じ時代に、あえて頭の中の幻視だけを頼りに描かれたものだ。

晩年はエコール・デ・ボザールで教鞭を執り、型にはめる指導を嫌って弟子たちの個性を伸ばした。ここからアンリ・マティスやジョルジュ・ルオーといった、モロー自身とはまるで違う道を歩む画家たちが育ったのは象徴的だ。パリの自宅は死後、遺言により美術館として保存され、未完のまま残された無数の油彩と水彩が、いまも彼の頭の中を覗き見るように壁を埋め尽くしている。

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