
CC0
歌川国芳白面笑壁のむだ書 中
0
白壁を釘で引っ掻いたような線で、役者の顔が六つ描いてある。上段左は縞の襟の若い男、右は目を細めて口を開けた福々しい男。中段左は眉を寄せて歯を見せる男、右は口髭をたくわえた男。下段左は目を見開いた男、右は髷に櫛を挿した女方。朱の仮名で「わらつてゐる」「やうだ」「おちやのこ」「またをかぶだ」と書き散らしてある。並ぶのは四代目中村歌右衛門、三代目岩井粂三郎、三代目中村東蔵、三代目関三十郎、四代目尾上梅幸、二代目市川九蔵の似顔とされる。
天保の改革で、幕府は役者の似顔絵を禁じた。国芳は、壁の落書きを写しただけだという体裁をとって役者絵を出し続けた。先行する揃物《荷宝蔵壁のむだ書》は、題の「荷宝蔵」が「似たから」の地口になっている。本図はその趣向を引き継いだ別の揃物で、大判三枚続の中図にあたる。
落款も落書きの一部である。下段中央に「一勇齋國芳画」と、角ばった拙い手で書いてある。彫った印は使っていない。右図では「国よしゑがく」と仮名で署名し、左図では丸に桐の印を手で描いてある。本物の印は、題簽の上に捺された名主二人の改印だけである。この双印の形式は弘化4年から嘉永5年(1847〜52年)まで使われた。









