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鈴木春信三十六歌仙 紀友則
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歌をもとに描かれたのに、この摺りには歌がない。鈴木春信の《三十六歌仙 紀友則》は、昔の名歌を絵の上に摺り、その心を江戸の暮らしに重ねる、春信が得意とした「見立絵」の一つである。すぐれた歌人36人を取り上げたシリーズに属する。
それでも紀友則の絵と分かるのは、大英博物館にある同じ図の摺りに、友則の名と歌が摺られているからである。友則は平安時代の歌人で、百人一首の「ひさかたの光のどけき春の日に静心なく花の散るらむ」で知られる。
この絵に重ねた歌は、『拾遺集』の「夕されば佐保の川原の川ぎりに友まどはせる千鳥鳴くなり」である。夕方になると、奈良の佐保川の川原で、川霧に紛れて仲間を見失った千鳥が鳴いている、と詠む。大英博物館の摺りでは川の上を三羽の鳥が飛ぶが、この摺りには鳥もいない。雪の川辺を行く二人に、歌の心細さを重ねた絵と読める。









