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中川一政

中川一政

なかがわ かずまさKazumasa Nakagawa
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真鶴の岬に構えた画室から、中川一政(なかがわ かずまさ、1893〜1991)は毎日のように海の向こうの箱根・駒ヶ岳を眺めた。同じ山を何十枚描いても飽きなかった。絵具を練り物のように厚く盛り、輪郭を叩きつける太い筆で、山の量感ごと画布へ運んでしまう。原色をぶつけ合った画面は、遠目にも岩肌の重さが伝わってくる。

東京・本郷に生まれ、誰かに師事したわけではない。独学で油絵を始め、大正3年、巽画会展に出した《酒倉》が岸田劉生の目にとまった。劉生に推され、翌年にはその草土社へ加わる。1922年には小杉放庵や梅原龍三郎らと春陽会を興し、以後、生涯を在野の画家として通した。

1949年、神奈川県真鶴に移り住んでからは、眼下の福浦港、漁師が水揚げした魚、半島に咲く野の花、そして向日葵と薔薇を描き続けた。薔薇だけで八百点を超える。晩年は油彩を離れ、水墨に岩絵具を混ぜた画や、豪快な書——「われはでくなり」——にも筆を伸ばし、陶芸や随筆にまで手を広げた。1975年に文化勲章。九十七歳で世を去るまで、手から筆が離れることはなかった。

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