ジャック・ピアソン
ネオンサインの店じまい、モーテルの朽ちた看板、映画館の解体現場——ジャック・ピアソンが拾い集めるのは、誰かがもう要らなくなった文字である。書体はばらばら、色も高さも揃わない。それを壁に一語や短句として並べ直したとき、ただの廃材だったはずのアルファベットが、急に個人的な告白のように響き始める。1991年に始まる〈ワード・スカルプチャー〉の連作は、既製品の断片から感傷を組み立てるという、この作家に特有の詩法を確立した作品群である。
1960年、マサチューセッツ州プリマス生まれ。1984年にマサチューセッツ美術大学を卒業した。学生時代のボストンでは、親密な生活をそのまま撮る「ボストン派」と呼ばれる写真家たちの輪に加わり、ナン・ゴールディン、フィリップ=ロルカ・ディコルシア、デイヴィッド・アームストロングらと親交を結んだ。特定の師に付いて技法を仕込まれたというより、互いの生活と作品を見せ合いながら育った世代であり、ピアソンもその空気の中から自身の文体を見つけ出していった。
写真、彫刻、ドローイング、コラージュを隔てなく行き来する仕事ぶりは、いずれも同じ一点、すなわち憧れと喪失をめぐる。写真集《Self Portrait》(2003年)では、みずからの顔を一度も見せることなく、少年から老人までさまざまな年齢の男性の姿を並べ、まるで一人の男の人生を編集し直したかのような自画像を作り上げた。この仕事は翌2004年のホイットニー・ビエンナーレに出品され、ピアソンの名を美術界に広く知らしめている。
2025年にはオバマ財団の委嘱により、シカゴのオバマ大統領センターのために「hope」の一語を綴る大型の文字彫刻を制作した。ゴミ捨て場から拾われた文字が公共の記念空間に据えられるという巡り合わせは、ピアソンが30年以上抱き続けてきたテーマ——見捨てられたものに宿る希望——をそのまま体現している。
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