雨に濡れた万代橋を、蛇の目傘の人影がひとつ渡ってゆく――井上安治(1864〜1889)の《東京真画名所図解 万代橋雨中》は、輪郭線ではなく光の滲みで橋も雨も暮色も立ち上げてみせる。文明開化の東京を、明るすぎず騒がしすぎず、水気を帯びた薄明のなかに写しとった。これが安治の眼である。 元治元年、江戸浅草並木町(現在の雷門界隈)に生まれた。
1888
明治22年(1889年)・木版画