虎ヶ雨と呼ばれる旧暦五月の雨。蓑を着た人々が坂を下り、雨に霞む海と松並木が続く。曾我兄弟の伝説に結びつく地名を、湿った空気で表す。
雨、雪、夕靄——広重の画面には、いつも空気が満ちている。人はしばしば背を向け、傘の下に顔を隠し、宿場の辻を足早に通り過ぎる。名所を描きながら、その名所を主役にしなかったところに、この絵師の特異な眼があった。 歌川広重(1797〜1858)は、定火消同心・安藤源右衛門の子として、八代洲河岸の定火消屋敷に生まれた。
1856・木版多色刷/大判竪絵
1857・木版多色刷/大判竪絵
1858・木版多色刷/大判竪絵