台町の坂道に茶屋が並び、女たちが旅人の袖を引いて客を呼ぶ。坂の下には神奈川湊の海が開け、帆船が浮かぶ。人の賑わいと海景を一図に収める。
雨、雪、夕靄——広重の画面には、いつも空気が満ちている。人はしばしば背を向け、傘の下に顔を隠し、宿場の辻を足早に通り過ぎる。名所を描きながら、その名所を主役にしなかったところに、この絵師の特異な眼があった。 歌川広重(1797〜1858)は、定火消同心・安藤源右衛門の子として、八代洲河岸の定火消屋敷に生まれた。
1856・木版多色刷/大判竪絵
1857・木版多色刷/大判竪絵
1858・木版多色刷/大判竪絵