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児

児玉幸雄

こだま ゆきおYukio Kodama
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パリの朝、まだ人のまばらな広場に露店が組み上がっていく——児玉幸雄(1916〜1992)が生涯くり返し描いたのは、そんな市場の情景だった。籠に山と盛られた果物、パラソルの落とす影、値をやりとりする買い物客のざわめき。児玉はそこに漂う暮らしの温もりを、重い写実に沈めることなく、明るい色と軽い筆でひと息にすくい上げた。

大阪に生まれ、関西学院大学に在学中、美術部・弦月会で田村孝之介の手ほどきを受けた。1937年に二科展へ初入選。戦後の1947年には、師の田村孝之介らとともに二紀会の創立に加わり、以後この会を発表の場とした。

画風が定まったのは、1957年にはじめてヨーロッパの土を踏んでからだ。以後ほぼ毎年のように海を渡り、パリの広場や露天市、雑踏する街角へ画架を運んだ。人と物とがひしめきあう市場を、生活の匂いごとつかまえながら、けっして湿っぽくならない叙情へと変えてみせる——そこが児玉の絵の呼吸だった。

石版画集『フランスの四季』『パリーの街角』にも、同じ市場と路地が息づいている。1992年、東京で没した。

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