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ウィリアム・ホガース

ウィリアム・ホガース

William Hogarth
14 作品

ロンドンの貧しい家に生まれ、借金で父が投獄される屈辱を子供時代に味わった。銀細工師の徒弟から出発し、はじめは名刺や商標の彫版で糊口をしのいでいたホガースが行き着いた先は、絵画そのものを舞台劇のように仕立てる、それまで誰もやらなかった手だった。一枚の絵でめでたしめでたしを描くのではなく、複数枚の連作で一人の人物の転落や結婚の破綻を追う。《娼婦一代記》で最初にこの手法を世に問い、続く《放蕩一代記》では田舎から出てきた青年が遺産を蕩尽し、賭博場から精神病院タイバーンへと転がり落ちていく様を、まるで新聞の連載小説のように追いかけた。細部が異様に饒舌で、壁に貼られた紙一枚、床に転がる玩具の兵隊、犬の表情にまで意味を仕込む。これを版画に起こして安価に売り出したことで、貴族の邸宅の壁を飾る絵画とはまったく別の回路——庶民の居間や酒場の壁——に絵が届くようになった。海賊版が横行したため議会に働きかけ、著作権法(通称ホガース法)を成立させたのも彼で、画家であると同時に商売人としての嗅覚も鋭かった。

結婚してすぐにでは上流の家柄と成金の金が政略結婚する滑稽と悲惨を六場面で描き、ジン横丁とビール街では安酒に溺れる貧民街と健全な労働者街を対比させ、当時のジン規制法を後押しする世論喚起の役も果たした。オランダの風俗画やイタリア絵画の教養主義を横目に見ながら、彼は「イギリス人の目に映るイギリス」を描くことにこだわり、聖書や神話に頼らず市井の顔つきと仕草だけで物語を成立させた。肖像画家としても《エプソムの一団》や自画像画家とパグ犬のような率直な作品を残し、著書『美の分析』では蛇のようにうねる曲線こそ美の根源だと説き、後の美学論争に一石を投じた。

説教くさく見えて実は笑いに満ちているのが彼の身上で、悪徳を糾弾しながらもどこか登場人物への愛着が滲む。この、道徳と娯楽を同じ画面に同居させるやり方は、のちのトマス・ローランドソンやジェームズ・ギルレイらの風刺版画、さらには近代の連続コマ漫画にまで血脈をつないでいる。イギリス独自の絵画が生まれる前夜、その最初の一筆を引いたのがホガースだった。

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