
上村淳之
うえむらあつしUemura Atsushi
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祖母は美人画の上村松園、父は花鳥画の上村松篁。日本近代絵画史でも稀な、三代そろって文化勲章を受けた画系の三代目として、上村淳之(1933〜2024)は京都に生まれた。松園が女性の内面を、松篁が花と鳥の華やぎを描いたのに対し、淳之が生涯かけて見つめたのは、鳥がただそこに息づいている一瞬の静けさだった。
京都市立美術大学(現・京都市立芸術大学)専攻科に学び、父・松篁のもとで花鳥画の画技を受け継いだ。松篁が創立に加わった創画会に会員として身を投じ、1980年に創画会賞を得て、のちに理事長を務める。制作の根には、他の画家にはない徹底した生活があった。奈良の自邸に数百種の鳥を飼い、日本鳥類保護連盟奈良研究所の所長として、鳥の骨格や換羽、餌をついばむ仕草や眠る姿を日々間近に観察し続けたのである。淳之の写生は、図鑑的な正確さのためではなく、生きものがそこに在ることの気配を掴むためのものだった。
朝靄のなかに鳥がひそむ《晨》(1978年)は、その眼が花鳥画へと定まる転機となった一作である。淡い墨と抑えた彩り、大きくとられた余白のなかへ、鳥の温度と静寂を沈み込ませていく。1995年には《雁金》で日本芸術院賞を受け、2002年に日本芸術院会員となった。京都市立芸術大学の教授・副学長を歴任し、1994年に開館した松伯美術館では、松園・松篁・淳之三代の画業を守る館長を長く務めた。2013年に文化功労者、2022年には文化勲章を受章。祖母・父の描いた華やぎをあえて削ぎ落とし、羽一枚の質感と鳥の佇まいへと画面を澄ませていったところに、上村家が三代かけて到達した最も静かな地平がある。
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