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ティントレット

ティントレット

Tintoretto
10 作品

父は染物職人だった。「ティントレット」は本名ヤコポ・ロブスティにつけられたあだ名で、イタリア語で「小さな染物屋」を意味する。生涯ヴェネツィアを離れず、その街の教会や同信会館の壁という壁を絵で埋め尽くした男である。

若くしてティツィアーノの工房に入るが、わずか数日で追い出されたという逸話が伝わる。才能を恐れた師が早々に厄介払いしたというのだ。真偽はさておき、彼のアトリエには「ミケランジェロの素描とティツィアーノの色彩」と大書された標語が掲げられていたと言われ、この二人を頂点に見据えていたことは間違いない。

1548年、サン・マルコ同信会館のために描いた奴隷を救う聖マルコの奇跡で一躍評判をとる。宙を斜めに飛来する聖マルコ、群衆のざわめき、光と影が渦を巻くような構図——静かに祈る宗教画とはまるで違う、劇場の一場面を切り取ったような迫力があった。以後、スクオーラ・グランデ・ディ・サン・ロッコの装飾を約20年かけて手がけ、天井から壁面まで数十点の大画面を一人でやり遂げる。速筆で知られ、注文をこなす量は同時代の誰よりも多かったが、その速さが絵を粗くすることはなく、むしろ画面の緊張感を生んだ。

晩年の最後の晩餐(サン・ジョルジョ・マッジョーレ聖堂)は、食卓を斜めに配し、天使が煙のように舞う異様な光の演出で、それまでの静的な図像を突き崩してしまった。ドゥカーレ宮殿の天国は現存する油彩画としては最大級の大きさを誇る。工房には娘マリエッタや息子ドメニコも加わり、家族総出の一大製作所と化していた。激しい明暗と動的な構図は、のちのバロック絵画へまっすぐに道を開くことになる。

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