
ギュスターヴ・カイユボット
Gustave Caillebotte
31 作品
パリの裕福な織物商の家に生まれ、法律とエンジニアリングを修めたのち、絵筆を執る道を選んだ。金に困ったことがない画家というのは印象派の中でも珍しく、そのぶん彼の目は生活の必要から自由だった。床削り(1875年)では、上半身裸の職人たちがパリのアパルトマンの床にかがみ込み、鉋屑を削り出す様を、写真のような正確な遠近法で描いた。労働者の肉体を主題に据えたこの絵はサロンから拒否され、翌年の第2回印象派展に出品されることになる。
代表作パリの通り、雨(1877年)は、オスマン化されたパリの広い街路を傘をさして歩く人々を、大胆な構図と鋭い光の処理で捉えた一枚だ。印象派らしい筆触の軽さより、むしろ写実的な正確さと都市の孤独感が際立ち、彼が単なる仲間内の追随者ではなかったことがわかる。エドガー・ドガの都市的な視点や、エドゥアール・マネの現代生活への関心と通じ合いながらも、独自の硬質な画面構成を持っていた。
だが美術史上、カイユボットが果たした最大の役割は、絵筆よりもむしろ財布によるものかもしれない。彼はクロード・モネ、ピエール=オーギュスト・ルノワール、カミーユ・ピサロらの絵を惜しみなく買い支え、生活に困窮する仲間たちを金銭的に助けた。1894年に45歳で急逝した際、彼が遺した印象派コレクションはフランス国家への遺贈という形で美術館入りし、のちのオルセー美術館の核となる。生前は自らボートを設計し、パリ郊外プティ・ジュヌヴィリエの庭で植物を育てることに没頭した多才な人物でもあった。
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