
ウィリアム・モリス
壁紙も、椅子も、詩も、社会そのものも、モリスにとっては同じ一つの仕事だった。牧師の子として裕福に育ち、オックスフォードで中世建築と詩に耽溺するうち、彼は産業革命が量産した安っぽいモノの氾濫にはっきりと苛立つようになる。建築家フィリップ・ウェッブと組んで新婚のために建てた《レッド・ハウス》は、家具から壁紙まで自分たちで設計し尽くした住まいで、この経験が「暮らしの隅々を美しくする」という生涯のテーマを決定づけた。
大学時代からの親友、ダンテ・ガブリエル・ロセッティやエドワード・バーン=ジョーンズとともに絵画にも手を染めたが、モリスの本領はむしろ模様にあった。植物の蔓や鳥をリズミカルに反復させる壁紙・織物のデザインは、当時の量産品には見られない有機的な密度を持ち、〈いちご泥棒〉をはじめとする文様は今なお色褪せず愛され続けている。会社モリス・マーシャル・フォークナー商会(のちのモリス商会)を興し、染織から家具、ステンドグラスまで手仕事の職人技を組織的に復権させたこの運動は、のちにアーツ・アンド・クラフツ運動と呼ばれ、ヨーロッパの装飾芸術とデザイン教育に長く影響を及ぼした。
晩年は活字と印刷にも情熱を注ぎ、ケルムスコット・プレスを設立して自ら装飾を手がけた豪華本を刊行、なかでも『チョーサー著作集』は書物という工芸品の頂点として名高い。詩人としても評価され、ユートピア小説『ユートピアだより』では、機械文明を退けた牧歌的な社会を思い描いた。実際、モリスは晩年に社会主義運動へも身を投じており、美と労働の喜びを万人に取り戻すことこそが彼の芸術の核心だった。装飾は表層の飾りではなく、作り手の手の記憶そのものだという信念を、彼は生涯貫き通した。
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