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ルーカス・クラーナハ(父)

ルーカス・クラーナハ(父)

ルーカス・クラーナハLucas Cranach the Elder
9 作品

クラーナハの描く裸婦は、どこかよそよそしい。細く吊り上がった目、なで肩、薄い胸、蛇のようにくねる腰の線――解剖学的な写実を追い求めた同時代のアルブレヒト・デューラーとは正反対の方向に、この画家は歩いていった。生まれは南ドイツの小都市クロナハ。名はそこから取られている。若い頃にウィーンで活動した数年間、ドナウ河畔の鬱蒼とした森を背景に聖人や十字架を描き、風景がまだ添え物でしかなかった時代に自然そのものを主役に押し上げた仕事は、のちのドナウ派の出発点として記憶される。

転機は1505年、ザクセン選帝侯フリードリヒ賢明公に宮廷画家として招かれ、ヴィッテンベルクに居を構えたことだった。以後ほぼ半世紀、この町を動かず、巨大な工房を築き上げる。息子の小ルーカス・クラーナハをはじめ大勢の助手を動員し、注文に応じて同じ図像を何十枚も量産する体制は、もはや個人の手仕事というより一種の企業だった。市長も二期務め、印刷業や薬種商まで手掛けた抜け目のない商売人でもある。

何より大きかったのは、隣人マルティン・ルターとの友情だ。宗教改革の渦中、クラーナハはルターの肖像を繰り返し描いて図像として世に広め、ルターの結婚式では立会人を務めた。アダムとイヴを主題にした連作、《ヴィーナス》の細く白い裸体、あるいは宮廷貴顕の硬質な肖像画――どれも一目でそれと分かる独特の様式は、ルネサンスの理想美から意図的に外れることで、逆に強い個性として残った。81歳、ヴァイマルで没する直前まで筆を握っていたという。

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