酒
酒井抱祝
さかい ほうしゅくSakai Hōshuku
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一つの画室の名を、五代にわたって守り継ぐとはどういうことか。酒井抱祝(さかい ほうしゅく、1878〜1956)は、江戸琳派の画室「雨華庵」を五世として受け継いだ日本画家である。雨華庵は酒井抱一が江戸・下谷根岸に構えた画室で、抱一の没後も酒井鶯蒲(二世)、酒井鶯一(三世)、そして四世・酒井道一と当主を替えながら画系を保った。抱祝は道一の子として生まれ、幼くして父から筆の運びを手ほどきされ、大正2年(1913)に父の跡を継いで五世となった。唯一、あるいは狗禅とも号した。
抱祝が生涯を通じて描いたのは、抱一以来の花鳥図である。とりわけ月ごとの草木に鳥や虫を配した月次の花鳥図は、主題の選び方にも画面の運びにも抱一の作の祖型をたどることができる。装飾の華やぎをやや控えめにしたぶん、かえって雨華庵という画系の型が、簡潔なかたちで骨組みごと浮かび上がってくる。
家の様式を継ぐ絵師に問われるのは、目新しさではない。先達の筆致をどれだけ正確に自らの手へ写し取り、そのまま次代へ渡せるかである。昭和12年(1937)の書画名家一覧では「現代書画鑑識大家」に挙げられ、各地の書画番付にも幾度となくその名が刷られた——江戸琳派の直系という肩書きが、近代の書画界でなお一つの権威として通用していた証しである。抱一に始まり鶯蒲・鶯一・道一と渡ってきた雨華庵の画脈を、昭和のなかばまで途切れさせず保ったところに、五世抱祝の静かな仕事はあった。その作品は敦賀市立博物館などに収められている。
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