
エミール・ガレ
Émile Gallé
5 Artworks
ナンシーのガラス・陶器商の家に生まれ、家業を継ぐはずが、植物学と鉱物学に夢中になった青年だった。庭に出ては葉脈の走り方やとんぼの羽の透明さを飽きずに眺め、その観察眼をそのままガラスに移した人である。ドイツのマイゼンタールの工房で吹きガラスの技術を叩き込まれたのち、酸で表面を蝕刻して層を削り出すカメオガラスや、色ガラスを象嵌のようにはめ込む「ガラスの寄木細工」を独自に磨き上げ、きのこや蓟、蝶の翅脈までも器に閉じ込めてみせた。《ひとよ茸ランプ》は、笠の縁がやわらかく傾いだ姿そのものが一夜で萎れるきのこの生態を写しており、単なる装飾ではなく生き物の時間を封じ込めたような静けさをたたえる。日本の書画や俳句への傾倒も深く、来仏した高島北海との交友を通じて余白の呼吸や自然観照の姿勢を学び、家具には好んで詩句を彫り込んだ――「語る家具」と呼ばれる所以である。1889年と1900年のパリ万博で相次いで注目を集め、1901年にはナンシー派(エコール・ド・ナンシー)を組織してその会長に就任、エミール・ガレという一個人の名を超えてロレーヌの工芸運動そのものを牽引した。白血病により58歳で世を去るが、亡くなる直前まで手掛けていた作品には「悲しみの実」を意味する銘が刻まれており、病と向き合いながらも自然への眼差しを最後まで手放さなかった芸術家の執念がにじむ。アール・ヌーヴォーのガラス工芸を語るとき、彼の名を避けて通ることはできない。
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