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オノ・ヨーコ

オノ・ヨーコ

Yoko Ono
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舞台の中央に、女がひとり座っている。かたわらには一挺のはさみ。客席から人が上がってきて、その刃で彼女の服を少しずつ切り取っていく。彼女は身じろぎもしない。1964年に京都で初めて演じられた《カット・ピース》は、そんな場面だ。観客が作品を仕上げていく——というより、切り、剥ぎながら作っていく。オノ・ヨーコの仕事の芯にあるものが、この一幕に詰まっている。

小野洋子は1933年、東京の生まれ。1953年に家族と渡米し、ニューヨーク郊外のサラ・ローレンス大学で音楽と詩を学んだ。1960年代初頭からニューヨークを拠点に前衛の輪へ入り、やがてフルクサスに加わる。1961年にはカーネギー・リサイタル・ホールで、音楽ともパフォーマンスともつかない公演を打った。

彼女の作品の多くは、完成した「物」ではなく、鑑賞者へ手渡される言葉の指示としてある。読んだ人が実行し、あるいは頭のなかで思い描いたとき、はじめて立ち上がる。床に直に敷いたカンヴァスを来場者に踏ませる《踏まれるための絵画》(1960/61)。1964年に東京で自費出版した指示文の小さな本『グレープフルーツ』——「煙が消えるまで見つめなさい」といった短い言葉が並ぶ。透明な台の上にひとつだけ載った本物の林檎《アップル》(1966)。白一色の駒と盤で、指すうちにどれが自分の駒か分からなくなる《ホワイト・チェス・セット》(1966)。どれも、作るという行為の主導権を、作り手から見る者の手へ滑り込ませてしまう。

1969年、ジョン・レノンと結婚。ベッドの上に二人で寝そべり、報道陣を招き入れる《ベッド・イン》をはじめ、行為そのものを媒体にして反戦と平和を世界へ投げかけた。2009年、第53回ヴェネツィア・ビエンナーレで金獅子功労賞。2015年にはニューヨーク近代美術館が初期に絞った個展「Yoko Ono: One Woman Show, 1960–1971」を、2024年にはロンドンのテート・モダンが英国最大規模の回顧展「Yoko Ono: Music of the Mind」を開いた。

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