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海

海老塚耕一

えびづか こういちKoichi Ebizuka
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銅版に鋼の針を立てて引っ掻くと、削られた金属の縁がめくれ上がり、毛羽のような盛り上がりができる。海老塚耕一のドライポイントは、その毛羽にたっぷりインクを溜めて刷る。線は硬い彫りにならず、黒く滲んでゆらぐ——水面を走るちいさな波、あるいは目に見えない風の通り道になる。《浮遊する水—風との対話》や《静止した水》といった連作の題そのままに、彼が長く向き合ってきたのは、形を持たない水と風、そして物と物の境目だった。

1951年、横浜に生まれる。多摩美術大学の建築科で学び、大学院を出たのちに母校で教え、芸術学科長まで務めた。建築で鍛えた空間の感覚は版画より先に彫刻へ向かい、木・石・金属を組み合わせて、素材どうしが引き合う場そのものを立ち上げる仕事になった。1986年、第6回インド・トリエンナーレでゴールド・メダル。1988年のアジアンアート・ビエンナーレ最優秀作家賞、1991年の平櫛田中賞、2003年の高島屋文化賞と受賞が続く。

神奈川・山北の作業所に籠もって石を割り鉄を溶接する日々は、詩人で映像作家の鈴木志郎康がカメラを回し、《極私的にEBIZUKA》(2001年)と《山北作業所》(2002年)の二本の記録映画に残った。父は画家の海老塚市太郎である。

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