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川合玉堂

川合玉堂

かわいぎょくどうKawai Gyokudo
9 Artworks

愛知県の木曽川べりに生まれ、幼い頃から水と山に親しんで育った。十代で京都に出て望月玉泉の門を叩き、続いて円山四条派の写生精神を叩き込んだ幸野楳嶺に学ぶ。ここで培った的確な写生眼を携えて上京し、狩野派の骨法を継ぐ橋本雅邦の教えを受けたことで、玉堂の画風は決定的な厚みを得た。京都仕込みの繊細な自然観察と、東京仕込みの骨太な構成力——この二つの水脈が一人の画家の中で合流したところに、玉堂の風景画の強さがある。

代表作行く春は、渓流に散る桜と、それを見送るように舟を操る人々を描いた大作で、日本画でありながら空気の湿り気や水音までも伝わってくるような画面をつくり上げた。彩雨や《二日月》もそうだが、玉堂の絵にはいつも人の暮らしが自然の中に溶け込んでいる。山を歩く牛、川を渡る人、雨に濡れる里——そこに描かれるのは名所旧跡ではなく、誰もがどこかで見たことのある日本の日常の風景だ。奇をてらわず、しかし写生に裏打ちされた確かな筆で、四季の移ろいと人の営みを丁寧に描き続けた。

東京美術学校で教鞭を執り、後進の育成にも力を注いだ。太平洋戦争末期には東京を離れ、多摩川上流の御岳の地に移り住み、そのまま終の棲家とした。渓谷に囲まれたこの土地をこよなく愛し、晩年まで画室の窓から見える山水を写し続けたという逸話が、彼の画業の姿勢そのものを物語っている。1940年には文化勲章を受章し、近代日本画における風景表現の一つの到達点を築いた画家として、今も高く評価されている。

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