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板谷波山

板谷波山

いたやはざんItaya Hazan
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茨城・下館の商家に生まれた板谷波山は、東京美術学校で彫刻を学んだ人である。師は木彫の大家高村光雲。だが卒業後に赴任した石川県の工業学校で陶芸の指導に携わったことが、その後の人生を決定づけた。彫刻家として身につけた造形の確かさを、彼は器の量感とフォルムに注ぎ込むことになる。

1903年、東京・田端に自邸と窯を構えたときから、長い忍耐の日々が始まる。窯の火加減ひとつで作品が台無しになる釉薬の実験を、借金を重ねながら十年近く続けた。米すら買えず妻の着物を質に入れたという逸話は有名だが、波山はそれでも妥協した器を世に出すことを拒み続けた。焼き上がりが気に入らなければ、その場でハンマーを振るって割ったという。

その執念の果てに生まれたのが、代名詞となる葆光彩磁である。上絵の上にごく薄い釉をもう一層かけて焼くことで、絵付けの色彩を柔らかな靄の向こうに沈めるこの技法は、中国・朝鮮の古陶磁への敬意を土台にしながら、誰も見たことのない透明感を持っていた。牡丹や葡萄、蝶といった文様が、陶肌の奥からほのかに滲み出るように浮かぶ。《葆光彩磁珍果文花瓶》はその到達点を示す一作である。

文展・帝展で高い評価を受けながらも、波山は一貫して制作の速度を落とさなかった。1953年、陶芸家として初めて文化勲章を受章。それでも田端の窯を離れることなく、90歳で没するまで土と釉に向き合い続けた生涯だった。

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