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ヒエロニムス・ボス

ヒエロニムス・ボス

Hieronymus Bosch
28 Artworks

快楽の園を初めて目にした人は、たいてい言葉を失う。左に楽園、中央に裸体の男女が戯れる桃色の庭、右に業火と怪物がひしめく地獄――三枚の板に人類の一生を圧縮して見せる発想そのものが、同時代のどの画家からも突出していた。ヒエロニムス・ボスは現在のオランダ南部、スヘルトーヘンボスに生まれ、生涯のほとんどをこの町から出なかった。姓の由来もここにある。祖父も父も画家という家系に育ちながら、誰の弟子として修業したかを示す記録はほとんど残っておらず、その孤立ぶりがかえって彼の異様な独創性を物語る。裕福な家の娘アレイト・ファン・デ・メールフェンネと結婚し、生活の心配から解放されたことも、あの奇怪な想像力を存分に羽ばたかせる余裕になったのだろう。聖母マリア同信会という敬虔な信徒組織に名を連ねる篤実な市民でありながら、描く絵は魚の顔をした化け物、卵の殻から生えた足、楽器に串刺しにされる罪人といった悪夢の図像で埋め尽くされている。干し草車や七つの大罪聖アントニウスの誘惑はどれも、人間の強欲・色欲・愚行を容赦なく暴く道徳劇であり、当時の説教や俚諺、錬金術の図像までを貪欲に飲み込んだ末に生まれた独自の記号体系だった。写実の技術で世界を写すのではなく、見えないはずの罪と幻想を見えるかたちに変えてしまう――このやり方は死後も長く模倣され、なかでもピーテル・ブリューゲル(父)は彼の幻想と社会風刺の眼を正面から受け継いだ一人である。謎めいた生涯の割に、残された絵は五百年後の今も色褪せるどころか、見る者の不安をまっすぐに突いてくる。

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