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カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ

カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ

Caspar David Friedrich
42 Artworks

後ろ姿の人物が、果てしなく広がる霧や海や氷原を前にただ立ち尽くしている。フリードリヒの絵を一度見た者は、あの背中を忘れられない。雲海の上の旅人の男も、海辺の僧侶の小さな影も、風景の雄大さに呑まれながら、こちらに顔を向けようとしない。見る者は人物の視線を借りて、その向こうの自然と対峙させられる仕組みになっている。

生まれはバルト海に面したグライフスヴァルト。石鹸とロウソクを商う家の六番目の子で、幼くして母や妹を相次いで亡くし、さらに弟が氷上で溺れる事故を目の当たりにしている。この喪失の記憶が、後年の凍った海や墓地、朽ちた修道院を描く筆に影を落としているのは想像に難くない。コペンハーゲンのアカデミーで学んだのち、1798年からドレスデンに居を構え、生涯のほとんどをこの街で過ごした。エルベ川沿いの散策やリューゲン島への旅で見た岩や樹木を丹念にスケッチし、それらをアトリエで再構成して、実景のようでいてどこにも存在しない風景を組み立てていく。

テッチェンの祭壇画で十字架を人里離れた岩山の頂に据えたときは、宗教画に世俗の風景を持ち込んだとして物議を醸した。だがフリードリヒにとって、樅の木も朝靄も夕暮れの光も、すべてが信仰の言語だった。友人のフィリップ・オットー・ルンゲと並び、北方ロマン主義の風景画に精神性を吹き込んだ人物として知られる。

晩年は評価が落ち込み、貧困のうちに脳卒中で倒れ、1840年にドレスデンで没した。長らく忘れられた存在だったが、20世紀に入ってノルウェーの美術史家らが再発見し、シュルレアリストやマーク・ロスコら抽象表現主義の画家たちにまで影響を及ぼす存在として、いま改めて読み直されている。

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